人と自然が共存する「コウノトリ育む農法」の1年

おいしいお米を育てながら、「コウノトリを再び、日本の空へ」の想いを形にするため、私たちにできることって何だろう。

絶滅危惧種のコウノトリを守り・育てながら、但馬でしかできない米づくりを行うため、生産者が積極的に推進するのが「コウノトリ育む農法」です。

コウノトリを愛する但馬の生産者は、人と自然が共存できる本来あるべき農業の在り方を実践しています。

「コウノトリ」ってどんな鳥?

皆さん、「コウノトリ」ってご存知ですか?名前を聞いたことがあるという人は多いかもしれません。コウノトリは「幸福を運ぶ鳥」とも言われ、ロシア極東地域から中国、韓国、日本などに2,000羽あまりしか生息していない貴重な鳥です。

ツルやサギのような姿で、大きさは、立った状態の体高で約1m、両翼を広げると約2m。体重は4〜5kgほど。体全体は白く、くちばしと羽のうしろ側にある風切羽が黒いことが特徴です。

主に川や田んぼに住むフナやドジョウ、カエルやヘビ、バッタなどを食べて生きています。時にはネズミやカメも食べるそうです。

JAたじま
広報課

絶滅危惧種に認定されているコウノトリ。実は、但馬ととてもゆかりが深いんです!

明治時代以前は日本各地に生息していたコウノトリですが、明治から昭和初期の乱獲でその数は大きく減少しました。また、戦後に農薬・化学肥料の使用、水田の乾田化、河川の護岸コンクリート化などが進み、エサとなる生き物の多くが姿を消してしまったため、コウノトリが生きていくには困難な環境となりました。さらに、エサとなる生き物にも有機水銀が蓄積されており、それを食べて命を落とすコウノトリも現れるようになりました。

JAたじま
広報課

私たち人間が、知らず知らずのうちにコウノトリのすみかを奪っていたのです。そして昭和46年、ついに日本のコウノトリは絶滅してしまいました。その最後の生息地となったのが、兵庫県北部・但馬の中心に位置する豊岡市です。

絶滅を機に、豊岡の人々は「コウノトリを再び空へ」という強い想いを胸にするようになります。そして、生息地域の保全活動を中心とする野生復帰への取り組みを開始しました。

それから約50年を経た現在までに、国内で300羽を超えるコウノトリが野生復帰を果たし、かつてのように但馬の空で優雅に羽ばたいています。

JAたじま
広報課

一度は絶滅してしまったコウノトリを復活させたい。そして、おいしいお米を生産しながら、多様な生き物を育んでいけるような豊かな自然環境を守り続けたいというのが私たちの願いです。

JAたじまは、環境への負荷軽減と安全・安心な農作物の生産を実現する「環境創造型農業」を今後も推進していきます。

人と自然が共存する「コウノトリ育む農法」ってどんな農法?

「コウノトリ育む農法」とは、おいしいお米と多様な生き物を育み、コウノトリも住めるゆたかな文化・地域・環境づくりを目指すための農法です。

生き物が生息しやすい環境づくりのために、冬の田んぼにも水を張る「冬季湛水」の実施、育苗段階からの有機質肥料の使用、無農薬または減農薬での安全・安心な栽培など、様々な技術を採用しています。

これらの取り組みは、コウノトリのエサとなる生き物を育て、コウノトリの生息地に豊かな自然を残すことにも繋がっています。

コウノトリ育む農法の1年

春の田んぼでは、アメンボやオタマジャクシなどの生き物が生まれます。そこで、田植えの1ヶ月前には田んぼに水を張る「早期湛水」を実施します。初夏にさしかかると、メダカやドジョウ、ヤゴなどの生き物が姿を見せます。田んぼの水温が20℃になる5月20日以降に田植えを行い、それから約40日間は田んぼの水を深くする「深水管理」を行うことで、生き物たちが暮らしやすい田んぼをつくります。

夏~秋

オタマジャクシがカエルに、ヤゴやトンボに成長する夏には、田んぼの水位を下げて「中干し」を行います。その後、田んぼには稲の生育に必要な水を入れ、稲刈りの2週間くらい前から自然落水させます。秋は稲刈りの季節ですが、この頃になると成長したカエルやクモ、カマキリが稲を食い荒らすカメムシ、ゾウムシなどの害虫を補食してくれます。生き物たちの助けを借り、すくすくと育った稲を刈り取ります。

「コウノトリ育む農法」では冬にも水を張るために、稲刈り後の田んぼに漏水を防ぐ畦をつけたり、土に生きる微生物のエサとなる有機物を散布したりします。たじまに冬が訪れる頃、田んぼに残ったワラが浸かるくらいまで、田んぼに水を張ります。これを「冬季湛水」といいます。「冬季湛水」を行うことで、冬の間に微生物の働きなどにより、ゆたかな土壌ができます。また、水辺の生き物が暮らせるため、冬の間もコウノトリはエサを確保できます。

「コウノトリ育むお米」とは

コウノトリの野生復帰に貢献する「コウノトリ育む農法」で栽培された、但馬のおいしいお米が「コウノトリ育むお米」です。可能な限り、自然のままの田んぼで栽培・収穫された安全・安心なお米は、ふっくら・やわらかで、粘り強く、冷めてもおいしいという特長があります。

コウノトリ育むお米のご紹介

お米を食べることが、環境への貢献

豊岡市内にある34校の小中学校では、給食にコウノトリ育むお米(減農薬)を使用しています。そのきっかけはなんと、小学生自ら行った、市長への「私たちの給食に出して欲しい」という直談判がきっかけでした。保護活動を継続し、たくさんのコウノトリを空に帰すためには、もっともっとコウノトリ育む農法の田んぼを広げる必要があります。コウノトリの保護活動に胸を打たれ、自分にできることは何かと考えた小学生たちがいました。そして、あることを思いついたのです。

「そうだ、消費を増やせばいい。自分たちがもっと食べればいいんだ!学校給食に出てくるご飯を、コウノトリ育むお米にすればいい!(ちょっぴり高いらしいけど)」

そこで子どもたちは市役所を訪ね、自ら市長に直談判することに。彼らの行動力が市長らを動かし、学校給食にコウノトリ育むお米を使うことを約束したのです。これまで兵庫県豊岡市はJAたじまと連携し、07年から市内の学校給食で「減農薬タイプ」を提供してきましたが、23年1月から、「無農薬タイプ」に切り替える体制を整え始めています。

市によると、学校給食に有機栽培米を通年で使う事例は全国でも珍しいそうです。完全無農薬栽培のコウノトリ育むお米が提供されるのは、市内の公立小・中学校全34校。市内では1日約7,000食の給食が提供されており、これからは切り替えに必要な年間約90tを安定供給できる生産体制を整えます。

JAたじま
広報課

コウノトリ育むお米に関する私たちの活動を多くの人に知っていただくため、活動レポートを発信しています。


また、「コウノトリ育むお米」をお買い求めいただくと、売上の一部が「コウノトリ保護育成基金」として寄付されます。お買い求めの際はぜひ、JAたじまのファーマーズマーケット「たじまんま」、JAたじまオンラインショップをご利用ください!

「コウノトリ育むお米」は、農林水産省主催の「令和2年度未来につながる持続可能な農業推進コンクール」の有機農業・環境保全型農業部門で最上位の農林水産大臣賞を受賞しました。コウノトリの野生復帰を目指して生産者、行政、JAが三位一体となった環境保全型農業に取り組む体制を構築したことが評価されました。

~その他の受賞歴~
第1回 生物多様性日本アワード特別賞
第12回 グリーン購入大賞環境大臣賞
第42回 日本農業賞(第9回食の架け橋賞)
ミラノ国際博覧会 出展/日本館フードコート使用
但馬産業大賞 自然と共生する環境創造事業部門
コウノトリ育む農法のお米 米・食味分析鑑定コンクール金賞
「クールジャパンアワード2017」の受賞
「GLOBALGAP」グループ認証取得 

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